アド・アストラ

アド・アストラ 5巻を電子書籍化。

共和制ローマで危機に陥り、その後大国へ飛躍するきっかけになった第2次ポエニ戦争の話。


古代ローマで英雄と言えばカエサルで彼は掛け値なしの天才で魅力ある人物ですが、彼に対等となる敵が、かろうじで一矢報いたウェルキンゲトリクス位だったのに対し、ポエニ戦争ではカルタゴのハンニバルとローマのスキピオというヨーロッパ史上屈指の名将がぶつかり合った稀有な時代で、個人的には古代ローマで一番おもしろいのはこの作品の第2次ポエニ戦争だと思います。


この巻で戦史ではいまだに教書に載り、お手本にされるほど完璧な包囲殲滅戦となったカンナエの戦いが始まりました。


カンナエの戦いではハンニバルの軍が約5万なのに対しローマは約7万と数では大きく劣るハンニバル軍がローマ軍を完全に包囲し、ローマ軍が戦死6万、捕虜1万という完璧な勝利をハンニバルが飾ります。


ハンニバルは前方に降伏したガリア兵を配置し、後方に粘り強い歴戦のカルタゴ兵、両脇に騎馬民族の騎兵を配置しガリア兵をわざと突破分断させ、後方のカルタゴ兵が粘る間に分断されたガリア兵と側背に回り込んだ騎兵で包囲するという作戦をとります。


この作品では包囲に至る過程が私の記憶と少し違っていましたが、今巻のラストで包囲網が完成するので次巻で殲滅戦が始まるかと思います。


この時代のもう一人の主人公のスピキオは共和制で役職に年齢制限があるローマでは指揮権を持たない兵士に過ぎないため、まだ活躍は殆どありませんが、これから先どのように描かれるかが楽しみです。


この時代の話は本当に面白く、マンガではヒストリエや寄生獣を書かれた作者さんが第2次ポエニ戦争時にシチリア島のシラクサで行われた籠城戦を描いて作品があり、これも面白くおすすめです。

小説ではローマ人の物語のハンニバル戦記などが読みやすくかつ丁寧に書かれており、おすすめです。

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